運改申請を画餅にしない本質的論議を!
全国各地からタクシー運賃改正申請が相次いでいる。
従来、全国的な運賃改正の 先導役を担ってきた東京都内からも申請が出揃いつつある状況だ。
今次の運賃改正は、 規制緩和後はじめての取り組みで、前回改正から実に十一年ぶりのチャレンジである。
にもかかわらず大きな懸念材料が二つ横たわっている。
その一つは、業界の外にあっての一般世論対策であり、
もう一つは、内にあっては経営者の自己矛盾の克服である。
世論対策とは、規制緩和による供給過剰によって、
需要と供給の経済原則からいえば、 タクシーは値上げではなく、
反対に値下げされなければならないことになるのだが、
それをバッシングされたとき、有効な反論が出来るのかということだ。
運賃改正申請の理由は、燃料費の高騰や乗務員の労働条件の改善。
燃料費の高騰といっても運送収入に占める増加率は二〜三%程度。
十五%以上の増収率を申請する 理由の大半は、やはり乗務員の労働条件改善になる。
にしても多くの新規参入事業者があり、 既存事業者の多くも増車していて、
供給量が増加したために乗務員一人当たりの生産性と収入が 減少したことの改善原資を、
運賃に転嫁するということが果たして理解されるのか。はなはだ疑問である。
さらに業界内の自己矛盾とは、次のようなことになる。タクシー事業者は、一台当たりの生産性が下がり、
売り上げ・利益が減少すると増車して対応しようとする。自社ばかりでなく、
他社も同様の対応をとると、さらに一台当たりの生産性は下がるという訳だ。
このような成り行きの中で、乗務員の労働条件を改善するために運賃を値上げするということを、
当の乗務員はどのようにどのように受け止めるのであろうか。
今次の運賃改定は、前門に一般世論が待ち構え、後門には運賃改定に同調せず、
この機を利用し事業規模の拡大をはかろうとする、抜け駆けの事業者がてぐすねを引く、
という危うい事情がひそんでいる。
いずれも蛇口(新規参入や増車)を開けっ放しにしていることに起因している問題だ。
規制緩和五年目に入り業界は、何らかの需給調整規制の必要性を主張し、行動を開始すべきである。
国土交通省は、需給調整規制の廃止を金城湯池がごとく主張しているが、
需給調整にかかる何らの規制がないのは我国を除き諸外国には見られない。
需給調整規制の是非という本質的な問題を、もう一度真剣に考えなければ、
運賃改定申請は画餅に終わる危険性をはらんでいる。